株 損益通算とは、一定の株式取引で出た利益と損失を相殺して、税金を計算する仕組みです。
「A社では10万円利益が出たのに、B社では7万円損した。税金は10万円にかかるの?」と迷う人もいるでしょう。
一定の条件を満たせば、利益10万円と損失7万円を相殺し、課税対象となる利益を3万円として計算できます。損失を使い切れない場合は、一定の要件で翌年以後3年間の繰越控除も検討できます。
この記事では、株の損益通算の対象、配当・複数口座との関係、確定申告で注意したい点を初心者向けに解説します。
株の損益通算とは?
株の損益通算は、対象となる株式等の利益と損失を相殺して、税金を計算する仕組みです。
例えば、同じ年にA社で20万円の利益、B社で12万円、C社で3万円の損失が出た場合を考えます。
| 取引 | 損益 |
|---|---|
| A社 | +20万円 |
| B社 | -12万円 |
| C社 | -3万円 |
| 通算後 | +5万円 |
売却益だけを見るのではなく、その年に対象となる利益と損失をまとめて考えることがポイントです。ただし、株なら何でも一緒に通算できるわけではありません。
国税庁は、上場株式等と一般株式等では区分が異なり、相互に損益通算できないと案内しています。まずは取引した商品・口座の区分を確認しましょう。
株の損益通算で知っておきたい基本5つ
1.同じ年の対象となる利益と損失を相殺できる
上場株式等の譲渡益と譲渡損は、同じ年の対象範囲で合算して計算します。
例えば銘柄Aで30万円の利益、銘柄Bで20万円の損失が確定していれば、通算後の利益は10万円です。株の損益通算は、まだ売却していない含み損ではなく、売却などにより確定した損失を対象に考えます。
給与所得や不動産所得など、株式以外の所得と自由に相殺できる制度ではありません。対象外の所得と混同しないよう注意してください。
2.一定の配当と損益通算できる場合がある
上場株式等の譲渡損失は、要件を満たし確定申告をした場合、上場株式等の配当所得等と通算できることがあります。
配当所得については、申告分離課税を選択したものが対象です。例えば売却損が10万円、対象となる配当所得が6万円なら、通算後に4万円の損失が残るイメージです。
配当の受け取り方、NISAでの扱い、課税方法は別途確認が必要です。配当を受け取る仕組みは、株の配当金の受け取り方と権利確定日で確認できます。
3.同じ源泉徴収あり特定口座では自動計算される場合がある
同じ証券会社の源泉徴収あり特定口座では、口座内の上場株式等の損益が証券会社側で計算される場合があります。
その源泉徴収口座へ配当等を受け入れる選択をしている場合には、一定の条件で譲渡損失と配当等を反映して源泉徴収額が計算されます。特定口座年間取引報告書も、申告内容を確認する重要な資料です。
一方で、他社口座の損益までは自動で合算されません。口座区分や配当の受入設定によって扱いが変わるため、年間取引報告書と証券会社の案内を確認してください。
4.複数の証券会社をまたぐ通算は確定申告で行う
別々の証券会社にある利益と損失を通算したい場合は、原則として確定申告による調整が必要です。
例えば、A証券で30万円の利益、B証券で20万円の損失があっても、それぞれの証券会社は他社口座の取引を把握できません。両方を通算するかは、年間の取引内容と申告の必要性を踏まえて検討します。
口座内で源泉徴収が済んでいる場合でも、他の口座の損失と相殺したいときや繰越控除を使いたいときは、申告が必要になる場合があります。
5.使い切れない損失は一定要件で3年間繰り越せる
損益通算しても控除しきれない上場株式等の譲渡損失は、一定の要件を満たせば翌年以後3年間にわたり繰越控除できます。
例えば2026年に50万円の損失が残り、翌年に20万円の利益が出た場合、その利益と相殺して残り30万円として管理するイメージです。実際の適用には、損失が出た年から必要書類を添えて確定申告を行い、その後も連続して申告する要件があります。
売買がなかった年でも申告が必要になる場合があります。翌年に使えると思い込まず、国税庁の最新案内と申告書類を確認してください。
損益通算すると税金はいくら変わる?
損益通算により課税対象となる利益が減れば、税額も変わる可能性があります。
上場株式の売却益が30万円、売却損が20万円である仮定では、通算後の利益は10万円です。2026年時点の一般的な税率で単純計算すると、次のようになります。
| 計算対象 | 税額の単純計算 |
|---|---|
| 通算前の30万円 | 300,000円×20.315%=60,945円 |
| 通算後の10万円 | 100,000円×20.315%=20,315円 |
| 差額 | 40,630円 |
これは手数料、端数処理、配当、他の所得、申告内容を考慮しない説明用の例です。税率や制度は改正される場合があるため、実際の申告では最新の情報を確認してください。
株の損益通算で間違えやすいポイント
含み損は、そのままでは損益通算の対象にならない
保有中の評価損である含み損は、通常は損失が確定していないため、損益通算で扱う譲渡損失とは異なります。
購入額100万円、現在評価額70万円で30万円の含み損があっても、保有を続けている段階では「確定した売却損」ではありません。税金を減らすことだけを目的に、保有方針と合わない売却を急ぐ必要があるとは限りません。
投資判断としての損切りと、税金計算としての損益通算は別の話です。損切り注文の仕組みは、株の逆指値注文と損切りでの使い方も参考にしてください。
NISA口座で出た損失は通算・繰越控除できない
NISA口座で発生した損失は、課税口座の利益との損益通算や繰越控除に使えません。
NISAは利益が非課税になる制度ですが、損失を税務上利用できる制度ではありません。NISAで20万円の損失、特定口座で30万円の利益があっても、税務上30万円から20万円を差し引くことはできません。
上場株式等と一般株式等は分けて考える
上場株式等と一般株式等の損益は、原則として同じように通算できません。
取引の形態によっては対象外となる場合もあります。自分の取引がどの区分に当たるか不明な場合は、証券会社の年間取引報告書や税務の相談先で確認してください。
確定申告前に確認するもの
まずは各証券会社の年間取引報告書を集め、利益・損失・配当・口座区分を整理します。
- 特定口座年間取引報告書
- 各口座の年間損益
- 配当等の受取状況と課税方式
- 前年から繰り越している損失の有無
- 確定申告に必要な付表・計算明細書
特定口座制度や年間取引報告書の見方は、国税庁の特定口座制度で確認できます。入力方法や書類は年度で変わることがあるため、確定申告書等作成コーナーの最新案内も参照してください。
株式投資の利益・配当・優待の基本を先に整理したい場合は、株式投資で利益が出る仕組みを確認しましょう。株価の変動要因を確認したいときは、株価が上がる・下がる主な要因も役立ちます。
よくある質問
株の損益通算とは何ですか?
対象となる株式等の利益と損失を相殺して、税金を計算する仕組みです。対象範囲や口座区分を確認する必要があります。
別の証券会社の口座同士でも損益通算できますか?
一定の対象取引であれば、確定申告によって通算を検討できます。証券会社をまたぐ損益は自動では合算されません。
株の損失は何年間繰り越せますか?
上場株式等の譲渡損失は、一定の要件を満たせば翌年以後3年間の繰越控除が可能です。損失が出た年から連続した申告が必要です。
NISAの損失も損益通算できますか?
できません。NISA口座で生じた損失は、課税口座の利益との損益通算や繰越控除に利用できません。
含み損でも損益通算できますか?
通常はできません。保有中の含み損は損失が確定していないため、売却などにより確定した損失とは扱いが異なります。
まとめ|株で損失が出たら対象と申告要件を確認しよう
株の損益通算は、対象となる株式等の利益と損失を相殺して、税金を計算する仕組みです。
- 同じ年の対象となる利益と損失を相殺できる
- 一定の上場株式等の配当と通算できる場合がある
- 同じ源泉徴収あり特定口座では自動計算される場合がある
- 複数の証券会社をまたぐ場合は確定申告を検討する
- 残った損失は一定要件で3年間繰り越せる
制度を使うために必要な書類や申告要件は取引内容によって異なります。まずは年間取引報告書を確認し、個別の判断が必要な場合は国税庁、税務署、税理士などへ相談してください。
制度の詳細は、国税庁の上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除、株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い、上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度を確認してください。
投資・税務に関する注意事項
本記事は株式投資および税制度に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断や申告方法を保証するものではありません。税制は改正される場合があります。実際の確定申告では国税庁の最新情報、税務署、税理士などへ確認してください。株式投資には価格変動による損失リスクがあり、元本および利益は保証されません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

