FXの全決済注文は、保有している複数の建玉を一度の操作でまとめて決済する機能です。
「口座内のポジションが全部なくなる?」「一括決済とは何が違う?」「表示価格で必ず決済できる?」と迷う初心者もいるでしょう。
結論として、全決済と一括決済の名称や対象範囲はFX会社によって異なります。ボタン名だけで判断せず、対象建玉と注文条件を確認してから発注することが重要です。
この記事では、FXの全決済注文の仕組み、一括決済や部分決済との違い、MATSUI FXの例、初心者が確認したい注意点5つを解説します。
注文から決済までの基本は、FX初心者の始め方をまとめたガイドで確認できます。
FXの全決済注文とは?
複数の未決済ポジションを、一度の操作でまとめて閉じる注文です。
複数の建玉を一度に決済する
FXでは、注文が成立して保有している未決済ポジションを「建玉」と呼びます。通常は、建玉を1件ずつ選んで決済できます。
例えば、米ドル/円の買いを2件、ユーロ/円の売りを1件保有しているとします。FX会社が定める全決済機能を使えば、対象となる複数の建玉を一度に閉じられます。
楽天FXでは、全通貨ペアの未決済建玉をまとめて決済する「全決済」と、指定した通貨ペアをまとめて決済する「通貨別全決済」が案内されています。参考:楽天証券「全決済注文」
対象範囲はFX会社によって異なる
「全決済」という名称でも、口座内の全通貨ペアが対象になる場合と、選択した通貨ペアだけが対象になる場合があります。
画面には「全決済」「通貨別全決済」「一括決済」「買建玉一括決済」など、複数の名称が表示されることがあります。発注前に確認画面で通貨ペア、売買方向、数量を確認してください。
全決済と一括決済は何が違う?
名称だけではなく、各FX会社が定める決済対象で区別します。
外為どっとコムでは、一括決済を同一通貨ペア・同一売買区分などの複数ポジションをまとめる方式、全決済を通貨ペアや売買区分を問わず全ポジションを決済する方式として区別しています。
一方、MATSUI FXは、同一通貨ペアの全建玉または売買方向別の建玉を閉じる機能を「一括決済注文」と呼びます。参考:外為どっとコム「一括決済と全決済の違い」
| 操作 | 基本的な対象 | 確認点 |
|---|---|---|
| 個別決済 | 選択した1件の建玉 | 決済数量と注文方法 |
| 複数決済 | 選択した複数の建玉 | 選択漏れと合計数量 |
| 全決済・一括決済 | FX会社が定める範囲の全建玉 | 通貨ペア、売買方向、対象外建玉 |

MATSUI FXの一括決済注文はどう使う?
MATSUI FXでは、同一通貨ペアの全建玉または売買方向別の建玉をまとめて決済できます。
同一通貨ペアの全建玉を対象にできる
松井証券の公式Q&Aでは、同一通貨ペアの全建玉、買建玉だけ、売建玉だけの一括決済注文を発注できると案内しています。
米ドル/円で買い1万通貨、買い2万通貨、売り1万通貨を保有しているなら、米ドル/円の全建玉、買建玉のみ、売建玉のみという形で対象を選びます。
操作はスピード注文画面で通貨ペアを選択し、「一括決済」「買建玉一括決済」「売建玉一括決済」から目的に合うものを選び、確認後に発注する流れです。参考:松井証券「FXで一括決済注文はできますか」
表示価格と約定価格がずれる場合がある
MATSUI FXの一括決済は、スリッページ幅を指定せず、注文を受け付けたときの同社生成レートで執行されます。
発注時の画面表示レートと実際の約定価格には差が生じる場合があり、その差は有利にも不利にもなり得ます。詳しい仕組みは、FXのスリッページが発生する原因も参考にしてください。
FXの全決済注文はどんな場面で使う?
複数のポジションをまとめて閉じ、保有リスクを早く小さくしたい場面で使われます。
相場急変時に対象ポジションを閉じたいとき
米雇用統計、CPI、FOMC、日銀会合、為替介入、突発的な地政学ニュースなどでは、相場が短時間で大きく動くことがあります。
複数建玉を1件ずつ決済すると、その間にも価格が変動します。全決済機能なら操作回数を減らせますが、希望価格で決済できることを保証する機能ではありません。
取引方針をいったんリセットしたいとき
買いと売りが混在して管理が複雑になった場合、対象建玉をまとめて閉じて、保有状況を整理する使い方があります。
ただし、含み損を確定すれば損失が消えるわけではありません。決済前に合計損益と必要証拠金への影響を確認しましょう。
一括決済すると損益はどうなる?
対象となる各建玉の利益と損失が約定時点で確定します。
次は仕組みを示す架空例です。米ドル/円の建玉を3件保有し、画面上の評価損益が次の状態だったとします。
| 建玉 | 評価損益 |
|---|---|
| 米ドル/円 買い1 | +5,000円 |
| 米ドル/円 買い2 | -2,000円 |
| 米ドル/円 売り1 | +1,000円 |
| 単純合計 | +4,000円 |
すべてを同時に決済した場合、単純な評価損益の合計は+4,000円です。ただし、実際の確定損益は約定価格、スワップポイント、取引条件などで変わります。
決済の一部だけを確定したい場合は、FXの部分決済の使い方を確認してください。部分決済は建玉数量の一部を閉じる方法で、全決済とは目的が異なります。
FXの全決済注文で注意したい5つのポイントは?
対象範囲、約定価格、数量上限、自動売買、決済後の残高を確認します。
1.決済対象の通貨ペアと売買方向を確認する
全通貨ペア、選択通貨ペア、買建玉だけ、売建玉だけなど、ボタンによって対象が異なる場合があります。
誤って必要なポジションまで閉じないよう、確認画面で通貨ペア、売買方向、件数、合計数量を見てください。
2.表示価格で必ず約定するとは限らない
価格を指定しない全決済・一括決済では、発注から約定までに価格が動く可能性があります。特に相場急変時や流動性が低い時間帯は注意が必要です。
価格差が気になった場合は、FXの約定履歴で注文価格と約定価格を確認する方法を参考に、取引履歴を確認しましょう。
3.1注文あたりの数量上限を確認する
松井証券の取引ルールでは、一括決済1注文あたりの上限は、メキシコペソ/円・南アフリカランド/円・ハンガリーフォリント/円が2,000万通貨、その他の通貨ペアが500万通貨です。
これは2026年8月現在の公式表記です。保有数量が上限を超える場合、全建玉を1回で発注できないことがあります。最新条件は松井証券「FX取引ルール」を確認してください。
4.自動売買の建玉が対象外になる場合がある
MATSUI FXでは、自動売買(リピート注文)で保有する建玉は、スピード注文から行う一括決済の対象に含まれません。
手動取引の建玉を一括決済しても、自動売買の建玉が残る可能性があります。「全ポジションがゼロになった」と思い込まず、建玉一覧を確認してください。
5.決済後に建玉と注文履歴を確認する
操作画面を開いてから発注するまでの間に、別の注文が約定することがあります。そのため、画面表示時の数量と実際の決済数量が一致しない場合があります。
決済後は、建玉数量、約定数量、約定価格、残った決済注文を確認します。未約定注文を消す操作との違いは、FXの注文取消ができない原因と確認方法で解説しています。
全決済すると指値・逆指値注文はどうなる?
既存の決済注文が自動取消になるかは、FX会社と注文種類によって異なります。
楽天FXでは、全決済または通貨別全決済の対象通貨ペアに出している決済注文は、すべて取消になると案内しています。
複合注文を利用していると、利益確定や損切りの関連注文もあります。全決済後は注文一覧を確認し、不要な注文が残っていないか見てください。複合注文の仕組みはFXのOCO注文とFXのIFO注文で確認できます。
全決済とロスカットは同じ?
利用者が自分で発注する全決済と、FX会社の基準で行われる強制決済は別です。
全決済・一括決済は、基本的に利用者自身が対象を確認して発注します。一方、ロスカットは証拠金維持率などが所定の基準に達した場合に、損失拡大を抑える目的で執行される仕組みです。
ロスカットがあるから損失額が限定されるとは限りません。急変時には預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性もあります。詳しくはFXでロスカットされる人の共通点を確認してください。
FXの全決済注文に関するよくある質問
名称と対象範囲は利用会社の画面・取引ルールを優先して確認しましょう。
FXの全決済注文とは何ですか?
複数の建玉を一度の操作でまとめて決済する機能です。対象となる通貨ペアや売買方向はFX会社によって異なります。
全決済と一括決済は同じですか?
必ずしも同じではありません。全ポジションを対象にする会社もあれば、同一通貨ペアや売買方向別の建玉を対象にする会社もあります。
MATSUI FXに全決済注文はありますか?
MATSUI FXでは一括決済注文という名称で、同一通貨ペアの全建玉または買建玉・売建玉をまとめて決済できます。
自動売買の建玉も一括決済されますか?
MATSUI FXでは、自動売買で保有する建玉はスピード注文の一括決済対象に含まれません。ほかのFX会社については各社の取引ルールを確認してください。
一括決済なら表示価格で必ず決済できますか?
保証されません。価格を指定しない注文では、通信や処理の時間差、相場状況などにより表示価格と約定価格に差が生じる場合があります。
まとめ|FXの全決済注文は対象範囲を確認して使おう
FXの全決済注文は、複数の建玉をまとめて閉じるための機能です。
- 全決済と一括決済の定義はFX会社ごとに異なる
- 発注前に通貨ペア、売買方向、数量を確認する
- 表示価格と約定価格がずれる場合がある
- 1注文あたりの数量上限を確認する
- 自動売買など対象外の建玉がないか確認する
- 決済後は建玉一覧と注文履歴を見る
一度の操作で決済できる便利さだけでなく、何が対象になり、どの注文が残るのかまで確認することが大切です。
FX取引には元本割れのリスクがあります。相場の急変などにより、預けた証拠金を上回る損失が発生する可能性もあります。本記事は特定のFX会社や通貨ペアの売買を推奨するものではありません。全決済・一括決済でも希望価格で約定できない場合があります。取引条件とリスクを確認し、ご自身の判断と責任で取引してください。元本および利益は保証されません。
